わたしを空腹にしないほうがいい
以前から気になっていたけれど、なかなか手に取れないでいた一冊をついに読んだ。この本は歌人であり小説家でもあるくどうれいんさんの食、とりわけ自炊に関するエッセイを集めたもの。
今まで読んだどの自炊エッセイよりもわたしにはぐさっと鮮明に刺さった。それはこの本に描かれている風景が全て鮮明で、まるでわたしもその場にいるような気になるほどで、とても生活を描いているからだと思う。「ていねいな暮らし」というヴェールに包まれているようには感じないけれど、描かれている風景はとても愛おしくて、あぁもしかしてわたしの生活も見方を変えたらこんなに愛おしいものなのかもしれないと自分の生活を思い返すきっかっけにもなる。
この本の根底に流れている、自分の腹を満たすための自炊という自炊に対する概念がとても気に入った。
さあ、お皿を洗わなければ。明日も明後日も、この先もずっと、わたしがわたしを空腹にしないように。
『わたしを空腹にしないほうがいい』51ページ
自分を喜ばせ、満たすための食事を、日常の中でできる範囲で工夫してつくっていく。この自炊のスタンスで書かれたエッセイをもっとたくさん読みたいので、くどうれいんさんの他の食エッセイを読むのが今から楽しみ。
毎日読みます
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の著者であるファン・ボルムさんの読書にまつわるエッセイ集。
これを買おうと思ったのはとある金曜日。仕事終わりに駅のSoup Stock Tokyoでカレーを平らげ、なんとか閉店時間前に間に合う!と思い、少し早足で渋谷駅から駆け込んだ青山ブックセンターでのこと。前々から気にはなっていたけれど、ぱらぱらと本をめくってみた。読書に対する細かなこだわりや姿勢に共感をおぼえ、レジへと持っていった。
例えば、第3章『地下鉄で読む』にこんな一文がある。
振り返ってみると、「楽しい趣味」程度にしか思っていなかった読書に大きな意味を見出すようになったのも、ちょうどそのころだ。通勤の地下鉄の中で、わたしは、かつてないほど切実な思いで本を開いた。
『毎日読みます』27ページ
この一文に、「わたしだけじゃないんだ」と励まされた。『ちょうどこのころ』とあるのは、著者が学生から社会人になり2、3年目の多忙を極めていた時期のこと。
わたしはこの著者ほどではないけれど、でも仕事だけの人生になるのが怖くて本を読んでいるところがある。三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で、「生活の全てを仕事に捧げるのは、思考停止できるという点で楽ではある」といった趣旨のことを書かれていて、その言葉を借りるなら思考停止するのが怖くて、そうならないように、祈るように、本を手に取っている。
他にも、本が好きな人ならきっと頷きすぎて読み終わる頃には首が痛くなっているのではと思うくらい、本と読書への愛が詰まっている。
また、本や読書にまつわることを、実際の本を紹介しながら話すので、読みながら積読がどんどん増えてしまう一冊でもある。
三宅香帆さんが著者に対して「おまおれ?!」と言っていたけれど、その一言がとても分かる。
日記
書くことは癒し。仕事以外の自分があったことを思い出せる。自分にもできることがあると感じられる。
本を出せるような鋭いテーマや美しい文体で書けなくても、こうして自分の気持ちを言葉にできるだけで、自分にもできることがあると感じられる。